書店のビジネスコーナーや電子書籍のラインナップを見てみると、会社員をすぐに辞めてフリーランスになってみよう的な本が数多く並んでいます。
サラリーマンを10年経験してから、フリーランスになった僕から言わせて貰うとそれらの本の内容は無責任だなという印象です。
初めに結論から申しますと、サラリーマンの方が様々な面で有利だと感じます。
それでもなお17年もフリーランス生活を続けているのは、それなりの理由があるので続けている訳ですが、今まさに会社員を辞めてフリーランスになりたいと思う方がいるのならば、その前にこの記事を読んで頂くと少し冷静になるのではないかと思います。
それではサラリーマンの方が良い理由とフリーランスの僅かな利点を挙げて行きます。
ずばり会社員の最大のメリットとして社会的信用が挙げられます。
会社員として課長や部長に出世したり、名の通った一流企業に勤めていると、ご近所の評判とか、友人間の出世自慢も出来ますが、それは小さいメリットです。
会社員として最も社会的信用を発揮出来るのは銀行からの住宅ローン(借金)です。
これは社会的信用イコール、どれだけ借金出来るか数値化されます。
住宅ローンを借りる場合に事前審査を受けますが、収入に応じて借入可能額が決まります。
この事前審査のポイントはズバリ年収です。
サラリーマンの場合の年収は給料×12ヶ月であり、各種控除や社会保険料などは引いておりません。
しかしフリーランスの場合の年収は社会保険料や経費を差し引いた所得の事なので、手取りがサラリーマンと同じでも銀行側から見た年収は会社員とフリーランスとでは差があります。
銀行にもよりますが、借入可能額は年収の5倍までとするとサラリーマンの方が多く貸してくれます。
住宅は賃貸派の方ならいざしらず、一軒家や分譲マンションを購入したいと考えるならば、絶対サラリーマンの方が得です。
サラリーマンは毎月給料が振り込まれますが、長く会社員を続けているとこれが当たり前になります。もっと給料が欲しいなとか、今月も支払いが多いなとか、有り難いという感情よりもどう使っていこうかなという意識が強いと思います。
しかしフリーランスになると、完全歩合ですから、働けば収入が得られるし、働かなければ当然ですが収入が得られません。
フリーランスになれば誰しも頑張って収入を得ようとしますが、古くはリーマン・ショック、最近だとコロナ不況という社会的情勢によって、個人の努力では動かしがたい不況によって収入が入ってこなくなります。
これは景気が良ければ同業者からの紹介によって仕事が得られたり、営業すれば成果に繋がりますが、不況になると紹介は期待出来ないし、営業しても空振りばかりとなります。
記憶に新しいコロナ不況では営業しても仕事に繋がらなかったし、建設業者には痛かったウッドショックもあって心苦しい数ヶ月を過ごしました。
それでももがいていたら、仕事を得る事が出来ましたが、そんな苦しい時は毎月収入があるサラリーマンが良いなと心底思いました。
不況で倒産する会社もありますが、基本的には毎月安定した収入が得られるサラリーマンは良いと思います。
高校や大学では勉強という面で社会に出ても役立つ事は教わりますが、本当に大事なのは社会人マナーです。このマナーが欠如していると会社内での人間関係や取引先との付き合い方で苦労します。
殆どの会社では新入社員に対し、まずは研修と称した新人教育を行います。
その新人教育では目上の人に対する挨拶の仕方、名刺の渡し方などいわゆる社会人マナーを基礎から教わります。
その基礎を元に各自配属され、配属先でも同様に新人としての立ちふるまいを教わります。
しかし社会人経験の乏しいフリーランスはそれらの講習会に出席すれば良いですが、それらのマナーを知らないと、後々苦労する事になります。
会社員は給料を貰いながら、社会人マナーも身につけられるので、会社員のメリットの一つと言えるでしょう。
会社員になると部署に配属されますが、経理等の事務や人事以外は業務経験に伴いプロジェクトに参加する事になります。
例えば私は新入社員で現場監督として工事現場に配属されました。
その現場では所長と現場監督3人の計4人の現場でしたが、その現場は6億で受注した物件です。先輩の現場監督は10年目の方と3年目の方でしたが、私は新入社員なので何も分かりません。
いわば素人の状態ですが、その私が6億ものプロジェクトに参加出来て、測量や現場指示、図面作成等の業務経験が出来ました。しかし卒業したてのフリーランスがその現場に参加するのは不可能です。
もちろん、会社員になったとしても最初から大型プロジェクトに参加出来る訳ではありませんが、フリーランスよりも大きな仕事に携われる可能性は高くなります。
フリーランスになりたい場合は会社員として社会経験を少なくとも10年以上積んでから、フリーランスになった方が良いと思います。そして会社員だから出来る経験を積んでおきましょう。
少なくとも学校を卒業してから数年でフリーランスになってしまうと業務の幅が狭い状態になってしまうので、それは避けた方が良いでしょう。
どの会社にも営業部と経理部があると思いますが、会社員として工事部や販売部、IT系のプログラマー等の専門職では営業や経理をしなくても自分の業務に集中出来ます。
フリーランスでは自分で営業をして、自分で確定申告しなければなりません。会社員の時代はあまりこれらの事は気にしていませんでした。
営業で新規取引先を得るためにプレゼンテーションをして、職務経歴書や履歴書を提示しながら営業を進めるのは非常に大変です。
何件も営業を重ねてようやく得られた時は会社員時代の営業に感謝する気持ちが芽生えました。
また、経理も複式簿記を理解するのは結構大変で、青色申告のパソコンソフトもありますが、最初は苦労すると思います。
会社員では請求書を書く機会はありましたが、経理までの知識は必要ありませんでした。
自分で何でもこなさなければならないフリーランスは慣れるまで大変だと実感する事でしょう。
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ざっと会社員である事のメリットを5つ挙げてみましたが、次にフリーランスのメリットを挙げてみましょう。
サラリーマンのデメリットを挙げるとすると、通勤が挙げられます。
多くの方は電車通勤だと思いますが、朝の通勤における電車の混み方は異常です。
特に東京都内だとこれがヒドイ。乗客同士が押して、押されてギュウギュウ詰め。電車内はパニック状態です。
私は1日のエネルギーの半分近くを朝の通勤で使ってしまうのではないか?と思う位サラリーマン時代は大変でした。
フリーランスになってからは自宅を職場にするので、通勤時間がゼロになったのは身体的に非常に助かりました。
しかし、通勤時に歩くという行動がなくなってしまうので、意識して運動しないとあっという間に体力が落ちます。健康にも良くないので、ジムに通ったり、自宅で運動出来る環境を整える必要が出てくるでしょう。
ここ数年はコロナ禍によるテレワークも進み、通勤のない生活が良いと思うサラリーマンも少なくないのではないでしょうか。
会社員に対してフリーランスの数少ないメリットとして通勤のない生活があると言えます。
フリーランスのもう一つのメリットとして、スケジュールが組みやすいという点が挙げられます。
例えば家族や自分が具合悪くなった場合、急遽病院に行く事もサラリーマンよりも容易です。
そして昼間に買い物やジムに行って、その分夜間に仕事を行う事も可能です。
実際、コロナ禍以前はランチを食べてから1時間程度、近くのジムに行って身体を動かし、また帰って仕事する事が多く、気分的にリフレッシュされます。
しかし、自宅にいる事で仕事のオン・オフが切り替えにくい人もいるかもしれません。そのような方は自宅だけでなく、ノートパソコンを持ってカフェで仕事をしたり、レンタルオフィスで時間を決めて仕事するのも良いでしょう。
経費に余裕があれば自宅近くに事務所を借りるのも良いかもしれません。
基本的には取引先のスケジュールに合わせた働き方にもなりますが、早朝に仕事をやって日中は余裕のある働き方をしたり、夜間に仕事を行って日中に余裕のある生活をするなど、自分のスケジュールを管理出来ればフリーランスという選択肢も選ぶ人も増えるのでないかと思います。
会社員とフリーランスのメリットはいかがだったでしょうか。
会社員を続けていけるならば、フリーランスとして苦労した私としては絶対に会社員を辞めないで欲しいと思います。
それでも会社を退職して、次の転職先を探すまでの繋ぎとしてフリーランスを経験するのはアリだと思いますし、思いの外フリーランスでの仕事が捗れば、そのままフリーランスを続けるのもアリでしょう。
フリーランスのデメリットを知った上で、フリーランスとして独立したいと考えるならば、退職する前に冷静になってこの記事を見て頂きたいと思います。